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呉茱萸(ごしゅゆ)とは?―三伏貼に受け継がれる夏の養生と東洋医学の知恵―

薬草・生薬療法

「暑い夏に、体を温める。」

少し不思議に感じるかもしれませんが、東洋医学では、夏は一年の中でもっとも養生に適した季節と考えられてきました。

そんな夏の養生に古くから用いられてきた生薬の一つが「呉茱萸(ごしゅゆ)」です。

呉茱萸は、漢方薬として用いられるだけでなく、ツボへ生薬を貼る貼付療法や、生薬を用いた伝統療法にも活用され、現代中国でも夏の「三伏貼(さんぷくちょう)」などに受け継がれています。

この記事では、呉茱萸の歴史や特徴をはじめ、東洋医学における役割や、夏に取り入れたい養生法について、やさしくご紹介します。

目次

・【1】呉茱萸(ごしゅゆ)とは?
・【2】呉茱萸はどのように受け継がれてきたのか?
・【3】呉茱萸が使われる代表的な養生法
・【4】まとめ

【1】呉茱萸(ごしゅゆ)とは?

夏に取り入れたい、東洋医学の養生の知恵

東洋医学では、夏は一年の中でもっとも陽の気が盛んになる季節であり、この時期に体を整えることが、秋や冬を健やかに過ごすための大切な養生につながると考えられてきました。

そんな夏の養生に古くから用いられてきた生薬の一つが、呉茱萸(ごしゅゆ)です。

呉茱萸は、「ゴシュユ」というミカン科の植物の成熟した果実を乾燥させた生薬で、中国では二千年以上前から利用されてきたといわれています。

独特の芳香と辛みをもち、東洋医学では体を温め、冷えを和らげ、気や血の巡りを整える生薬として知られています。

漢方薬として服用されるだけでなく、体の外から働きかける「外治法(がいちほう)」にも用いられ、ツボへの貼付療法や、生薬を利用した灸法など、さまざまな養生法に活かされてきました。

🔽【動画】呉茱萸:1600年続く生薬利用の伝統

※呉茱萸(ごしゅゆ)は、ミカン科ゴシュユ属の植物 Tetradium ruticarpum の未成熟果実を乾燥させた生薬です。なお、旧学名 Evodia rutaecarpa でも広く知られています。

<1-1>「温める」ことを大切にする東洋医学

東洋医学では、体が冷えると気や血の巡りが滞り、さまざまな不調につながると考えられています。

そのため、「温めること」は、単に寒さを防ぐだけではなく、本来の体の働きを支える大切な養生のひとつです。

呉茱萸は、その温める性質を活かして、

  • 胃腸の冷え
  • 手足の冷え
  • 冷えによる腹部の不快感
  • 冷えからくる頭痛

など、冷えが関係すると考えられる不調に用いられてきました。

もちろん、これらは東洋医学の考え方に基づくものであり、現代医学における効能・効果を示すものではありません。

<1-2>夏こそ体を整えるという発想

現代の夏は、冷房の効いた室内で過ごすことが多く、冷たい飲み物や食べ物を口にする機会も増えています。

そのため、暑さを感じていても、体の内側は冷えていることがあります。

東洋医学には、「冬病夏治(とうびょうかち)」という、「冬に起こりやすい不調に備え、夏のうちから体を整える」という養生の考え方があります。

その代表的な方法として知られているのが、中国で現在も行われている「三伏貼(さんぷくちょう)」や「三伏天灸(さんぷくてんきゅう)」です。

呉茱萸も、こうした夏の養生に用いられる生薬の一つとして、大切に受け継がれてきました。

<1-3> 今、あらためて注目したい伝統の知恵

健康への関心が高まるなか、「季節に合わせて体を整える」という東洋医学の養生法が見直されています。

呉茱萸は、特別なものではなく、古くから人々の暮らしの中で活用されてきた身近な生薬のひとつです。

漢方薬として、あるいは外から体をいたわる養生法として受け継がれてきたその知恵は、現代の私たちの暮らしにも取り入れやすい考え方といえるでしょう。

次の章では、呉茱萸がどのような歴史をたどり、東洋医学の中でどのように活用されてきたのかをご紹介します。

【2】呉茱萸はどのように受け継がれてきたのか?

古くから伝わる生薬が、現代の養生にも息づく理由

呉茱萸(ごしゅゆ)は、中国で二千年以上にわたり用いられてきた歴史ある生薬です。

古くから「体を温める生薬」として重宝され、漢方薬として服用されるだけでなく、体の外から働きかける養生法にも取り入れられてきました。

時代とともに活用方法は変化しながらも、「体を整え、健やかに過ごす」という東洋医学の考え方は、今も受け継がれています。

<2-1> 古代中国で「温める生薬」として用いられる

呉茱萸は、「ゴシュユ」というミカン科の植物の成熟した果実を乾燥させた生薬です。

中国最古の薬物書とされる『神農本草経(しんのうほんぞうきょう)』をはじめ、その後の多くの本草書にも記載されており、古くから利用されてきたことがわかります。

東洋医学では、呉茱萸は体を温め、冷えを散らし、気や血の巡りを助ける生薬と考えられてきました。

そのため、

  • 胃腸の冷え
  • 冷えによる腹部の不快感
  • 手足の冷え
  • 冷えに伴う頭部の不調

など、冷えが関係すると考えられるさまざまな症状に用いられてきました。

<2-2> 漢方薬だけでなく、外から整える養生にも

東洋医学では、生薬は「飲む」だけではありません。

古くから、皮膚やツボに生薬を用いる「外治法(がいちほう)」も発展し、体の状態に合わせてさまざまな方法が工夫されてきました。

その代表的なものが、生薬をツボにあてて温める「隔物灸(かくぶつきゅう)」や、生薬を皮膚に貼って用いる「貼付療法(ちょうふりょうほう)」です。

呉茱萸も、こうした外治法に用いられる生薬の一つとして受け継がれ、体を温める目的で活用されてきました。

<2-3> 現代中国では「貼る養生」として親しまれている

現在の中国では、呉茱萸を用いた養生法として、お灸よりもツボに生薬を貼る外治法が広く行われています。

代表的なものには、

  • 呉茱萸貼(ごしゅゆちょう/吴茱萸贴)
  • 呉茱萸敷貼(ごしゅゆふちょう/吴茱萸敷贴)
  • 呉茱萸外敷(ごしゅゆがいふ/吴茱萸外敷)
  • 穴位貼敷(けついちょうふ/穴位贴敷)

などがあります。

いずれも、生薬を細かく粉末にして練り、ツボに貼り付けることで、体を整えることを目的とした伝統的な外治法です。

▶【動画】呉茱萸貼(ごしゅゆちょう)

<2-4> 夏の養生「三伏貼」と呉茱萸

こうした貼付療法の中でもよく知られているのが、夏の養生法である「三伏貼(さんぷくちょう)」です。

三伏貼は、一年で最も暑さが厳しい「三伏」の時期に、生薬をツボへ貼り付けることで、冬に起こりやすい不調に備えるという、東洋医学の「冬病夏治(とうびょうかち)」の考え方に基づいて行われます。

日本では「三伏天灸(さんぷくてんきゅう)」として紹介されることもありますが、現代中国では、もぐさを燃やすお灸ではなく、生薬を貼る方法が一般的です。

処方は医療機関や目的によって異なりますが、呉茱萸は三伏貼に用いられる生薬の一つとして配合されることも少なくありません。

そのため、呉茱萸は夏の養生を支える生薬として、現在も多くの人に親しまれています。

👉【関連記事】【中国の健康法】冬の病を夏に予防「三伏天灸」夏バテ予防

🔽【動画】三伏貼

<2-5> 受け継がれるのは「温める」という知恵

時代が変わっても、東洋医学が大切にしてきた「体を温め、巡りを整える」という考え方は変わりません。

漢方薬として服用する方法、ツボへ生薬を貼る方法、そして必要に応じてお灸と組み合わせる方法など、呉茱萸の活用法はさまざまです。

その根底にあるのは、季節や体質に合わせて無理なく体を整えるという養生の知恵です。

現代のように冷房や冷たい飲食物によって体が冷えやすい暮らしだからこそ、呉茱萸に受け継がれてきた「温める養生」は、今あらためて見直したい東洋医学の知恵といえるでしょう。

【3】呉茱萸が使われる代表的な養生法

暮らしの中で受け継がれてきた「温める知恵」

呉茱萸(ごしゅゆ)は、古くから「体を温める生薬」として親しまれ、漢方薬だけでなく、さまざまな養生法に取り入れられてきました。

服用するだけでなく、体の外から働きかける方法にも活用されており、東洋医学では季節や体調に合わせて使い分けられています。

ここでは、呉茱萸が用いられてきた代表的な養生法をご紹介します。

<3-1> 漢方薬として体の内側から整える

もっともよく知られているのが、漢方薬として利用する方法です。

呉茱萸は、胃腸の冷えや体の巡りを整える目的で、さまざまな漢方処方に配合されています。

代表的なのが「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」です。

東洋医学では、冷えによる胃腸の不調や頭痛、吐き気などに用いられてきた処方として知られています。

もちろん、漢方薬は体質や症状によって適した処方が異なるため、自己判断ではなく、医師や薬剤師、登録販売者など専門家に相談することが大切です。

<3-2> ツボへ貼る「貼付療法」

現代中国で広く行われているのが、生薬をツボに貼る「貼付療法(ちょうふりょうほう)」です。

細かくした生薬を練ってツボに貼り付け、一定時間そのままにすることで、体を整えることを目的としています。

呉茱萸は、体を温める性質を持つ生薬として、ほかの生薬と組み合わせて用いられることも多く、現在も中国の中医学病院などで実践されています。

服用が難しい人でも取り入れやすい外治法として、幅広い年代に親しまれています。

<3-3> 夏の養生「三伏貼」

夏の養生法として知られる「三伏貼(さんぷくちょう)」も、呉茱萸が活用される代表例のひとつです。

一年で最も暑さが厳しい「三伏」の時期は、東洋医学では体を整えるのに適した季節と考えられています。

この時期に、生薬をツボへ貼り付けることで、秋や冬の健康維持につなげようという考え方が「冬病夏治(とうびょうかち)」です。

三伏貼の処方は医療機関によって異なりますが、呉茱萸が配合されることも多く、夏の養生を支える生薬の一つとなっています。

<3-4> 生薬を用いた隔物灸

呉茱萸は、生薬を介して温める「隔物灸(かくぶつきゅう)」にも用いられてきました。

隔物灸とは、生姜やにんにく、塩などの素材をツボにあて、その上からもぐさで温める伝統的なお灸です。

呉茱萸も、地域や流派によっては隔物灸の素材として利用され、生薬の性質とお灸温熱を組み合わせた養生法として受け継がれてきました。

ただし、現在は貼付療法の方が広く知られており、呉茱萸を用いた隔物灸は比較的珍しい方法となっています。

<3-5> 現代にも活かしたい「温める養生」

冷房の効いた室内や冷たい飲食物など、現代の暮らしには体を冷やしやすい要素が多くあります。

東洋医学では、「体を温めること」は単に寒さを防ぐだけでなく、本来の働きを保つための大切な養生と考えられてきました。

呉茱萸は、その考え方を支える生薬の一つとして、古くから人々の暮らしに寄り添ってきました。

漢方薬、貼付療法、隔物灸など、活用方法はさまざまですが、その根底にあるのは「季節に合わせて無理なく体を整える」という東洋医学の知恵です。

日々の暮らしの中で、自分の体調や季節の変化に目を向けることが、健やかな毎日への第一歩になるのかもしれません。

【4】まとめ|季節に寄り添う「温める養生」の知恵

呉茱萸(ごしゅゆ)は、古くから東洋医学で「体を温める生薬」として大切にされてきました。

漢方薬として体の内側から整えるだけでなく、ツボへ生薬を貼る外治法や、生薬を用いた伝統療法など、さまざまな形で人々の暮らしに取り入れられてきた歴史があります。

なかでも、夏に行われる「三伏貼(さんぷくちょう)」は、「冬病夏治(とうびょうかち)」という東洋医学の考え方に基づき、冬に起こりやすい不調に備える代表的な養生法として、現在も中国で広く親しまれています。

現代の暮らしは、冷房や冷たい飲食物の影響で、暑い季節でも体の内側が冷えやすい環境にあります。

だからこそ、「温めること」を大切にしてきた先人たちの知恵は、今の私たちの生活にも参考になる部分があるのではないでしょうか?

無理に特別なことを始める必要はありません。

季節の変化に目を向け、自分の体と向き合いながら日々を過ごすことも、東洋医学が伝えてきた大切な養生の一つです。

呉茱萸という生薬に受け継がれてきた知恵をきっかけに、季節に寄り添う養生を、暮らしの中に少しずつ取り入れてみてはいかがでしょうか?

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