私たちは、心と体が健やかであってこそ、
日々の暮らしを穏やかに、充実して生きることができると考えています。
これまで当サイトでは、
動物鍼灸やペットセラピーなど、
生きている「いま」を大切にするケアを紹介してきました。
しかし、ウェルネスは「生」だけで完結するものではありません。
大切な存在を見送り、
その喪失と向き合い、
心を整えていく過程もまた、
心身の健やかさに深く関わる時間です。
今回取り上げるのは、
ペット葬、そしてペット供養というテーマ。
それは「別れの作法」であると同時に、
残された私たちの心を癒し、
日常へと戻っていくための静かなセルフケアでもあります。
神道式・仏教式という考え方の違い、
供養の流れ、
そして祈りの道具が持つ意味を知ることで、
ペットとの思い出は、
悲しみだけでなく、感謝と温もりとして心に残っていきます。
このページが、
ペットを見送ったあとも、
あなたの心と暮らしが穏やかに続いていくための
小さな支えになれば幸いです。
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【1章】ペット葬・ペット供養の基本
― 神道式と仏教式の違いをやさしく解説 ―
大切な家族であるペットが旅立ったあと、
「どう供養すればいいのか分からない」
「神道と仏教、何が違うの?」
と戸惑う方は少なくありません。
【1章】では、ペット供養の流れを中心に、
神道式と仏教式の違いについて、
一つひとつ丁寧に説明していきます。
<1-1> ペット供養の全体の流れ(神道式・仏教式)
まずは、ペットが亡くなってから日常供養に至るまでの基本的な流れを見ていきましょう。
神道と仏教で考え方は異なりますが、共通する部分も多くあります。
① 旅立ち(ご逝去)と安置
ペットが亡くなったら、まずは安らかに送り出す準備をします。
- 体をやさしく拭いて清める
- 眠っているような姿に整える
- 白布やタオルで包む
- 生前好きだったおもちゃや食べ物をそばに置く
これは神道・仏教どちらでも共通の大切な時間です。
「ありがとう」「大好きだよ」と声をかけながら、静かにお別れをします。
② 火葬の手配
次に、ペット霊園や動物火葬業者に連絡します。
- 個別火葬(返骨あり)
- 合同火葬(返骨なし)
を選ぶのが一般的です。
供養の形や、その後の安置方法に合わせて選びましょう。
③ 遺骨の安置
火葬後、遺骨は骨壺に納めます。
- 神道式:仮祭壇や霊前に安置
- 仏教式:仏壇やペット用祭壇に安置
白布を敷いた台の上に、
写真・花・水・好物などを供えるのが一般的です。
④ 位牌(霊璽)の準備
ここから、神道と仏教の違いがはっきりしてきます。
神道式
- 位牌より「霊璽(れいじ)」と呼ばれることが多い
- 白木や桧など、清らかな素材が好まれる
仏教式
- 一般的な「位牌」を用意
- 黒塗り、紫檀、白木など素材はさまざま
記載する内容は以下が多いです。
- ペットの名前
- 命日
- 享年(年齢)
- (仏教式の場合)戒名を入れることも
※ペット用位牌は、写真入りや可愛らしいデザインなど、自由度が高いのも特徴です。
⑤ 魂入れ・開眼供養
位牌や霊璽が完成したら、「魂を迎える儀式」を行います。
- 神道:魂入れ(たましいいれ)、霊璽奉斎(れいじほうさい)
- 仏教:開眼供養(かいげんくよう)
神主さんや僧侶に依頼し、正式な儀式として行うことで、
「祈りの対象」として整えられます。
■「魂を迎える儀式」をしてもらうタイミング
神道では、以下のタイミングが一般的です。
- 霊璽が完成したあと
- 仮祭壇が整ったあと
- 命日・四十九日・月命日などの節目
方法は、
- 自宅への出張祭典
- 神社へ持参しての奉仕
最近では、ペットの魂入れに対応している神社も増えています。
事前に相談すると安心です。
⑥ 祭壇の設え
ここも大きな違いがあるポイントです。
神道式の供え方
- 水(清水)
- 塩
- 米
- 花
- 榊(好みに応じて)
※線香は使いません。
仏教式の供え方
- 水
- 花
- 線香
- ろうそく
- 好物
祭壇の雰囲気も、
神道は白を基調に清らかで簡素、
仏教は香や花を重視した仏壇風になります。
⑦ 日々の供養
最後は、日常の中での供養です。
- 神道:毎朝水を替え、感謝の言葉を伝える
- 仏教:朝夕に手を合わせ、線香をあげて語りかける
形式よりも、想いを向ける時間が何より大切です。
<1-2> 仏教式供養の特徴
仏教では、節目ごとの供養が重視されます。
- 四十九日:魂が成仏するとされる大切な法要
- 年忌法要:一周忌、三回忌など
- お盆・お彼岸:霊が帰ってくるとされる時期
「命あるものすべてに仏性が宿る」という考えから、
ペットも人と同じように供養されます。
<1-3> 神道と仏教の違い
| 項目 | 神道 | 仏教 |
|---|---|---|
| 位牌の呼び方 | 霊璽(れいじ) | 位牌 |
| 魂入れ | 魂入れ・霊璽奉斎 | 開眼供養 |
| お供え | 水・塩・米・榊 | 水・花・線香・ろうそく |
| 祈り方 | 拍手(しのび手)・黙祷 | 合掌・読経 |
| 雰囲気 | 清らかで簡素 | 香と花を重視 |
どちらを選んでも、
**一番大切なのは「その子を想う心」**です。
最近では、ペットの魂入れに対応している神社も増えています。
事前に相談すると安心です。
神道でも仏教でも、
「こうしなければならない」という正解はありません。
大切なのは、
愛情と感謝をもって、手を合わせること。
その気持ちこそが、何よりの供養になります。
【2章】神道式供養で使う道具について
― 位牌(霊璽)・水玉・三方・奉書 ―
神道式のペット供養では、特別な高価な道具が必須というわけではありません。
ですが、それぞれの道具には意味があり、
その意味を知って使うことで、供養の気持ちがより丁寧に伝わります。
【2章】では、よく使われる基本的な神道式の道具を、ひとつずつ説明します。
<2-1> 神道式位牌(霊璽)について
神道では「位牌」よりも「霊璽」という考え方ですが、
ペット供養では形式にとらわれすぎる必要はありません。
◎選ぶときのポイント
- 素材:木曽桧、白木、アクリルなど
- 形:角柱型、神璽型、一般的な位牌型でもOK
- 記載:名前・命日・享年・祈りの言葉
◎木曽桧について
木曽桧(きそひのき)は、日本を代表する神聖な木材です。
伊勢神宮の御用材としても知られていて、清らかさ・高貴さ・長寿を象徴する木です。
■木曽桧の特徴
- 清らかでやさしい香り
- 防虫・防腐性が高い
- 年輪が細かく、美しい木肌
そのため、霊璽や神具に非常に適した素材とされています。

<2-2>素焼きの水玉(みずたま)
水玉(みずたま)とは、
神道の祭壇や霊前に清水を供えるための小さな器のことです。
正式には
- 「水玉(みずたま)」
- 「水器(すいき)」
とも呼ばれ、神棚や霊前で使われます。
多くの場合、
- 素焼き
- 白磁
で作られた、丸みのある小さな器です。
この中に**清水(きよみず)**を入れ、
神様や御霊にお供えします。
神道では、水は
最も清らかなもののひとつとされ、
心や場を清める力があると信じられています。
そのため、水玉の水は
毎朝、新しい水に替えるのが基本です。
これは、日々の感謝と敬意を表す行為でもあります。

◎なぜ「素焼き」なの?
水玉には、釉薬(ゆうやく)をかけていない
素焼きの器がよく使われます。
これは、
- 自然の素材そのままの質感
- 人工的な装飾を抑えた素朴さ
が、神道の大切にする
「自然との調和」
「清浄さ」
を象徴しているからです。
釉薬を使わないことで、
より清らかで、神聖な場にふさわしい印象になります。
◎水玉の置き方と意味
神棚や霊前では、
水玉は中央、または手前側に置くのが一般的です。
これは、水が
清めの象徴であり、
神様や御霊に最も近い場所に供えるべきもの
と考えられているためです。
◎基本的な並べ方(神棚の場合)
- 中央に水玉(清水)
- 左右に米や塩の器
- 奥側にお神酒や榊
※地域や家庭の作法によって多少の違いはありますが、
水が中心になることが多いです。
■他のお供えとの関係(三つ供え)
神道には「三つ供え」という考え方があります。
基本となるのは、
米・塩・水です。
- 米:命の糧、豊かさの象徴
- 塩:清めと守りの力
- 水:浄化と生命の源
これに加えて、
酒・野菜・果物・榊などを、
季節や行事に応じて供えることもあります。
<2-3>水玉の下に敷く台について
水玉の下に敷かれている
「お皿のようなもの」や「台」は、
台(だい)、または 三方(さんぽう) と呼ばれます。
特に神棚では、
三方という木製の台の上に供え物を置くのが、
正式な作法とされています。
また、水玉の下だけに
小さな白い受け皿や敷板を置く場合もあります。
これは、
- 水がこぼれたときに清潔を保つため
- 器と棚の間に一枚挟み、丁寧な気持ちを表すため
といった意味があります。
<2-4>奉書(ほうしょ)
奉書(ほうしょ)とは、
神道や仏教で使われる、神聖な意味を持つ白い和紙です。
- 上質な和紙
- 厚みがあり、なめらかな質感
- 無地の白が基本
神道では、
神具の下に敷いたり、
包んだりするために使われます。
「奉る(たてまつる)書(ふみ)」という言葉の通り、
敬意と清浄を表す紙です。
◎奉書の使い方の例
奉書は、次のような場面で使われます。
- 水玉や米・塩の器の下に敷く
- 仮祭壇の敷物として使う
- 霊璽(位牌)を包む
奉書は、
神聖なものと現世を隔てる「結界」
のような役割を果たします。
ペットの霊前でも、
奉書や白布を使うことで、
敬意と清浄の気持ちを表すことができます。
◎奉書を霊璽に挟むのは一般的?
はい。
神道式の霊璽では、
奉書を挟むのはよくある作法です。
霊璽の正面にある溝に、
細長く折った奉書を差し込む形で使います。
これは、
- 霊璽を清らかに保つため
- 神聖な存在を包み、守るため
- 敬意を表すため
といった意味があります。
■基本的な折り方(霊璽に挟む場合)
奉書紙は、帯状に折って使います。
- 奉書紙を横長に置く
- 縦に三つ折り、または四つ折り
(幅2〜3cm程度) - 折り目を整えてまっすぐにする
- 霊璽の溝に、上から下へ差し込む
※少しだけ上部を出すと美しく見えます
※神社によって流儀が異なる場合があるため、
授かった神社があれば確認すると安心です。
※奉書紙を扱うときの心がけ
- 手を洗ってから扱う
- できれば口をすすいでから行う
清らかな気持ちで扱うことが大切です。
◎奉書は専用の和紙?白い紙なら何でもいい?
奉書には、
「奉書紙(ほうしょがみ)」という専用の和紙があります。
■奉書紙の特徴
- 厚みがあり、破れにくい
- 表面がなめらか
- 神事や正式な場で使われる
基本は、無地の白です。
「白くて清潔な紙」で代用することも可能ですが、
できれば専用の奉書紙を使うことで、
より丁寧で格式のある祀り方になります。
◎奉書紙はどこで買える?
奉書紙は、以下の場所で購入できます。
- 神具店・仏具店
- 和紙専門店
- 大きめの文具店(冠婚葬祭コーナー)
- オンラインショップ
(「奉書紙」「神具用 奉書」で検索)
サイズは、
A4〜B4程度が一般的で、
霊璽に合わせて細長く折って使います。
◎奉書紙の保存方法と注意点
奉書紙は、湿気と直射日光に弱い和紙です。
■保存のポイント
- 乾燥した場所に保管
- 直射日光を避ける
- 折らずに平らに保管
- ビニール袋の場合は乾燥剤を入れる
■おすすめの保管方法
- 和紙用の紙箱や桐箱
- 書道用の紙ばさみ
- 年に一度、状態を確認する
このように道具の意味を知ることで、
神道式供養は、より心のこもったものになります。
【3章】神具・仏具の専門店が集まる街
― かっぱ橋道具街の先、浅草通り沿い ―
東京・台東区といえば、
かっぱ橋道具街が有名ですが、
上野駅から浅草方面へ向かう大通りである「浅草通り」沿いには、
昔ながらの仏具店や神具店が点在する一帯があります。
華やかな観光地とは少し雰囲気が違い、
静かで落ち着いた空気の中に、
桧(ひのき)を使った手作りの神具や、
職人の技が息づく道具が今も残っています。
【3章】では、
「なぜこの場所に専門店が集まったのか」
「いつが全盛期だったのか」
「昔の人はどれほど神具を身近に使っていたのか」
そして現在の姿について、順を追って説明します。
<3-1>何故、浅草通りに?
この一帯に神具・仏具の専門店が集まり始めたのは、
江戸時代後期から明治期にかけてとされています。
理由は、大きく分けて三つあります。
◎理由1:立地
浅草は、
浅草寺をはじめとする寺社が非常に多い地域でした。
さらに、江戸の町では、
- 寺請制度
- 檀家制度
が広く根付いており、
仏具や神具は生活に欠かせない必需品だったのです。
寺社が多い場所には、
自然とそれを支える職人や商人が集まります。
◎【理由2】職人の町だったこと
浅草・日本橋・上野周辺は、
江戸時代から木工・漆・金属加工などの職人町でした。
神具や仏具は、
- 木を選ぶ
- 削る
- 組む
- 仕上げる
といった工程が多く、
熟練の手仕事が不可欠です。
そのため、
すでに職人が多く住んでいたこの地域は、
神具・仏具づくりに非常に適していました。
◎【理由3】物流の拠点だったこと
隅田川をはじめとする水運により、
地方から木材や資材が集まりやすく、
完成した品を全国へ届けやすい場所でもありました。
こうした条件が重なり、
浅草通り沿いには、
神具・仏具の専門店が自然と集まっていったのです。
<3-2>全盛期
最も賑わいを見せたのは、
**明治後期から昭和中期(戦後しばらく)**にかけてです。
この時代、
- 各家庭に神棚・仏壇があるのが当たり前
- 新築や引っ越しのたびに神具を新調
- 結婚・出産・年中行事で神具を整える
といった習慣が、全国的にありました。
浅草通り沿いの専門店は、
- 寺社関係者
- 神主・僧侶
- 一般家庭
の注文を受け、
昼夜を問わず職人の手が動いていたと言われています。
<3-3>ほぼ全ての過程に神棚や仏壇があった時代
- 江戸時代
- 明治〜昭和初期
にかけては、
神棚と仏壇は、ほぼすべての家庭にあるものでした。
神棚には、
- 水玉
- 米・塩の器
- 榊立て
- 三方
が揃い、
日々、水を替え、手を合わせることが
生活の一部だったのです。
つまり、神具は
「特別な人が買うもの」ではなく、
誰もが人生の節目で自然に手にするものでした。
そのため、
専門店が街として成り立つほどの需要がありました。
<3-3>現在の状況
現在では、
- 住宅事情の変化
- 生活様式の多様化
- 宗教との距離感の変化
により、
神具を揃える家庭は、以前より減っています。
しかし、その一方で、
- 機械生産ではない
- 職人による手作り
- 国産桧を使った神具
を求める人は、
確実に存在しています。
浅草通り沿いの専門店では、
- 木曽桧など良材を使った神具
- 一点ずつ仕上げられた三方や水玉
- 相談しながら選べる対面販売
といった、
今では貴重な体験ができます。
大量生産ではなく、
「祀る気持ち」に寄り添った道具が、
今も静かに作られ、受け継がれています。
この一帯は、
観光地でも、大型商業地でもありません。
けれど、
日本人が当たり前に祈っていた時代の記憶
手仕事で神様と向き合ってきた文化
が、今も息づく場所です。
ペット供養や小さな神棚であっても、
こうした場所で選んだ神具には、
不思議と「重み」と「温かさ」があります。
