【種から育ててハーブを活用!植物療法 】#8 レモングラス
育てて楽しい、飲んで美味しい。香るハーブ・レモングラスで毎日を癒しの時間に。
レモングラスは、アジアやアフリカ、南米の文化で古くから親しまれてきた香り高いハーブ。消化促進や抗菌作用などの効能に加え、料理、ティー、アロマ、さらにはバスソルトまで幅広く活用できます。本記事では、レモングラスの歴史的背景や育て方から、家庭で楽しめる活用レシピまで網羅的にご紹介。梅雨時期の栽培注意点や、伝統療法における使い方も必見です!
📝目次
【1】レモングラスってどんな植物?
レモングラス(学名 Cymbopogon citratus)は、熱帯アジア原産の多年草で、イネ科に属します。見た目は長く細い葉を持ち、レモンに似た爽やかな香りが特徴で、料理、アロマ、ハーブティーとして幅広く活用されています。

- 香り成分: 主にシトラール(Citral)が含まれ、レモンのような強い香りの元。
- 形状: 根元が白く、葉は長くて細い。ネギやニラに似た形状。
- 栽培: 暖かく湿った気候を好み、東南アジア、南アジア、中南米、アフリカなどで広く栽培。
- 利用法:
- 食用: タイ料理やベトナム料理などで香り付け・風味づけに使われる。
- 薬用: 解熱、消化促進、鎮痛、抗菌、抗炎症などの効果が期待される。
- 精油: アロマテラピーで人気。リラックスや殺菌目的で使用される。
品種名 | 学名 | 用途 | 特徴・備考 | ハーブティー適性 |
ウエストインディアン種 | Cymbopogon citratus | ハーブティー、料理用 | 香りが強く、主に食用として利用 | ◎ |
イーストインディアン種 | Cymbopogon flexuosus | 精油・香料・化粧品 | 香料向けでやや香りが異なる | △(飲めるが香りが強い) |
ジャワ種(ジャワレモングラス) | Cymbopogon winterianus | アロマオイル用・防虫用 | 強い香りで精油成分が豊富 | ×(苦味が強く不向き) |
プラニフォリウス種 | Cymbopogon nardus | 虫よけ・精油(シトロネラ)用 | シトロネラールが多く、虫除け向き | × |
【2】各地で愛用されるレモングラス
≪2-1≫ 使用が盛んな国
1.タイ- トムヤムクンやカレーに欠かせない食材。
2.インド – アーユルヴェーダで古くから使用。
3.べドナム – スープや炒め物、マリネに多用される。
4.ブラジル – Capim-santo」と呼ばれ、伝統医療やお茶で広く使用。
5.ナイジェリア – 「fever grass(熱の草)」として知られ、風邪・発熱時のお茶や湯浴に使用。
≪2-2≫ 世界文化とレモングラス
- 東南アジア:タイ料理やベトナム料理で香りづけに使われ、「食薬」としての位置づけが古くから存在。
- インドのアーユルヴェーダ:消化促進や鎮痛の薬草として使用。
- アフリカ・南米:風邪や熱に対する民間療法の一環として用いられる。
- 西洋ハーブ療法:リラックス・抗菌目的で精油が用いられる。
- 昆虫忌避剤: 蚊除け効果が強く、天然の防虫剤としても世界中で重宝される。
効能 | 民間療法での使用法 |
消化促進 | 食後のハーブティーにして腹部の不快感を軽減 |
抗菌・抗真菌 | レモングラス精油を希釈して肌に塗布(ニキビや水虫ケア) |
鎮痛・鎮静 | お風呂に精油を数滴、または足湯に活用 |
虫除け | 精油スプレーやポプリとして空間に使用 |
📌 アーユルヴェーダとレモングラスの歴史
アーユルヴェーダは、インドの伝統医学であり、紀元前1500年頃から発展してきました。レモングラス(学名:Cymbopogon citratus)は、 “Chitraka” や “Bhutrin” とも呼ばれ、消化促進、解熱、鎮痛、抗菌、デトックスなどの目的で使用されてきました。特に、胃腸の不調や風邪の症状に対する自然療法として、レモングラスを用いたお茶や煎じ薬が一般的です。精油を「神聖な清浄作用のある香り」として寺院で使用することもある。
- 消化促進: 胃腸のガス抜き、腹部膨満感の解消。
- 解熱・鎮痛: 熱や頭痛に対して煎じ薬として使用。
- デトックス: 体内毒素の排出に有効とされる。
- 使用法:レモングラスティー、煎じ薬、オイルマッサージなど。
📌 アフリカとレモングラスの歴史
レモングラスは、アフリカの多くの地域で伝統的に使用されてきました。特に、西アフリカでは、風邪や発熱の際にレモングラスを煎じて飲む習慣があります。ナイジェリアでは「fever grass(熱の草)」として知られ、風邪や発熱時のお茶や温浴に使用されます。マリでは、レモングラスの葉を屋根の葺き材やほうきに利用するほか、虫除けとしても活用されています。
📌 ブラジルとレモングラスの歴史
ブラジルでは、レモングラスは「Capim-santo(聖なる草)」として知られ、特にアフリカ系ブラジル人の宗教であるカンドンブレ(Candomblé)やウンバンダ(Umbanda)で重要な役割を果たしています。これらの宗教では、植物は身体的・精神的な癒しのために使用され、レモングラスもその一部として儀式や日常的な儀礼に取り入れられています。
カンドンブレは、19世紀初頭にブラジルのバイーア州で発展し、アフリカからの奴隷たちが持ち込んだ宗教的・文化的伝統を基盤としています。レモングラスは、この宗教儀式の中で清めや浄化の儀式に使用され、神聖視されています。
📌 西洋ハーブ療法とレモングラスの歴史
西洋においても、レモングラスは19世紀から20世紀初頭にかけて、ハーブ療法や民間療法の一環として使用されてきました。特に、レモングラスの精油はリラックス効果や抗菌作用があるとされ、アロマテラピーや自然療法で利用されています。また、アフリカ系アメリカ人の伝統的な民間療法であるフードゥー(Hoodoo)では、レモングラスは「Van Vanオイル」の主要成分として使用され、悪霊除けや家の浄化、恋愛運を高めるために用いられています。レモングラスの精油はヨーロッパのハーブ治療師の間で「動物の虫除け」(特に馬や犬に)としても人気がある。
- 抗菌・抗真菌作用: 傷口の洗浄やスキンケアに。
- リラックス効果: 不眠、不安、ストレス軽減に芳香浴として利用。
【3】 レモングラスの効能
- 消化促進:胃腸の働きを助け、食欲不振・消化不良・ガス溜まりの解消に。
- 鎮痛・鎮静作用:筋肉痛・頭痛の緩和、ストレス緩和やリラックスに有効。
- 抗菌・抗真菌作用:風邪や皮膚疾患の原因菌への抑制効果。天然の防腐剤としても。
- 解熱作用:風邪や発熱時の自然な体温調節を助ける。
- 利尿・デトックス:体内の毒素や余分な水分の排出を促進。
- 抗酸化作用:細胞老化を抑え、アンチエイジングにも効果が期待される。
≪3-1≫ 有効成分
成分名 | 役割・効果 |
---|---|
シトラール(Citral) | 強いレモン香を持ち、抗菌・抗真菌作用、消化促進、鎮静作用。アロマや虫除けにも。 |
ミルセン(Myrcene) | 鎮痛・鎮静・抗炎症作用。リラックス効果が高く、不安の緩和にも。 |
ゲラニオール(Geraniol) | 抗酸化・抗菌作用、美肌成分としても知られ、香水や化粧品に使用。 |
リモネン(Limonene) | 消化促進、抗酸化作用、気分高揚作用(リフレッシュ効果)。 |
フラボノイド | 強い抗酸化作用で免疫サポート、老化防止。 |
【4】 レモングラスの育て方
📌 種まき時期
- 最適:5月下旬~7月中旬(梅雨明け直後がベスト)
- 暖かい地域なら5月上旬からOK。冷涼地は6月以降。
- 湿気に弱いので、梅雨の高湿状態は避けたほうが成功率が高い。
📌 栽培条件
- 日当たり:日光を好み(半日以上直射日光が理想)、風通しの良い場所に。
- 土壌:水はけの良い弱酸性~中性の土(野菜用培養土+腐葉土がおすすめ)
- 気温:生育適温は20〜30℃。寒さに非常に弱い(冬越しは室内が望ましい)
- 水やり:表土が乾いたらたっぷり。過湿は根腐れの原因になるため、梅雨時は雨が当たらない場所に移動
📌 育て方ステップ
- 種まき:ポットまたは育苗トレーにまき、薄く土をかけて軽く押さえる。
- 発芽:気温20℃前後で7~14日ほどで発芽。発芽率はやや低め。
- 間引き:本葉2~3枚で元気な苗を残す。
- 定植:本葉5〜6枚になったら、プランターや地植えに。株間は30cm程度確保。
- 肥料:月1〜2回、液体肥料または緩効性肥料を与える。
- 地植えなら冬は防寒対策必須。
【5】収穫・乾燥・保存
収穫のタイミング
- 収穫可能時期:7月〜10月頃まで。
- 高さ30〜40cm、茎が太くなったら収穫適期。
- 茎の部分が香り高く、刈り取りは地際から10〜15cm程度残してカットすると再生しやすい。
洗い方
- 収穫後は外側の枯れ葉を除き、流水で優しく洗う。
- 根元に土がついている場合は、ブラシで軽くこすっても良い。
- 水気はキッチンペーパーでしっかり拭き取る。
≪5-1≫自然乾燥の方法
- 束ねる: 茎を5〜10本束ねて麻紐などで縛る。
- 吊るす: 通気性の良い風通しの良い日陰(室内や軒下)に吊るす。
- 乾燥期間: 約 1~2週間 で完全に乾燥。触ってパキッと折れるくらいになれば完了。
- 保存: 密閉瓶や乾燥剤入り袋に入れて冷暗所で保存。6か月〜1年が目安。
≪5-2≫食品乾燥機の使用

- 準備:洗って水気をふき、茎や葉を適当な長さにカット(5〜10cm程度)
- 温度設定:40~50℃ が適温(ビタミン破壊を避けるため低温でじっくり乾燥させる)。
- 時間:約6〜10時間(機種や量により異なる)ほど乾燥させ、パリッと折れる状態になれば完了。
- 保存方法:完全乾燥後、遮光性のあるガラス瓶やジップ袋+乾燥剤を使って冷暗所保存。
- 長期保存の場合は 乾燥剤 を入れておくとより鮮度が保てる。
【6】活用法と注意点
1️⃣フレッシュレモングラスのハーブティー
◎材料:(1~2杯分)
- フレッシュレモングラスの葉 …10~15g(2~3本分)
- 水 …300~400ml
- お好みで:はちみつ、レモン、しょうが少々
◎作り方:
- レモングラスの葉を3~5cmに切り、軽く潰して香りを出す。
- 小鍋に水とレモングラスを入れ、火にかける。
- 沸騰したら弱火で5〜7分ほど煮出す。
- 茶こしでこしてカップに注ぐ。
- お好みではちみつやレモン、しょうがを加えても美味。
2️⃣ドライレモングラスのハーブティー
◎材料:(1~2杯分)
- 乾燥レモングラス …ティースプーン山盛り1〜2杯(約2〜3g)
- 熱湯 …300ml
- お好みで:はちみつ、レモン、カモミールやミントなどをブレンドしても◎
◎作り方:
- ティーポットに乾燥レモングラスを入れる。
- 熱湯を注ぎ、フタをして5~7分蒸らす。
- 茶こしでこしてカップに注ぎ、出来上がり。
- 甘さや爽やかさを加えたいときは、レモン汁やハチミツを加えて調整。
📌バタフライピーとレモングラスのブレンドティー

バタフライピーは、東南アジア原産のマメ科の植物「チョウマメ」の花を乾燥させたハーブで、最大の特徴はその鮮やかなコバルトブルーの色。この青は「アントシアニン」というポリフェノールの一種によるもので、抗酸化作用があるとされています。
味はかなり淡白で、ほんのり豆っぽい香りがある程度。単体だと「見た目はすごいけど味は…」という声もちらほら。そこで登場するのが爽やかな柑橘系の香りが特徴のレモングラス!バタフライピーの淡白さを補いつつ、レモングラスの酸味が加わることで、バタフライピーの青が紫やピンクに変化するという視覚的な楽しみも生まれます。この“色変わり”がSNS映えすることもあって、人気が高まっているんです。このブレンドは、味・香り・見た目の三拍子がそろっていて、まさに“鉄板”といえる組み合わせ。
3️⃣ 食用レモングラスオイルのレシピ(インフューズドオイル)
◎材料:(保存瓶200ml分)
- フレッシュレモングラスの茎 …3~4本(根元中心に使用)
- 食用オイル(オリーブオイルや米油などクセの少ないもの)…200ml
- お好みで:にんにく1片、赤唐辛子1本
◎作り方:
- レモングラスの根元部分(白い部分)を3〜5cmに切り、小口切りにする。
- 乾いたフライパンで水気を飛ばすように弱火で2〜3分乾煎りする(カビ防止)。
- 瓶を熱湯消毒し、しっかり乾燥させておく。
- 瓶にレモングラス、好みでにんにくや唐辛子を入れ、オイルを注ぐ。
- 冷暗所で2〜5日置いて香りを移す。1週間以内で使い切るのがベスト。
※冷蔵保存推奨。オイルに水分が残っているとカビの原因になるので注意。
4️⃣ レモングラスシロップのレシピ
◎材料:
- フレッシュレモングラス(葉または茎)…3〜4本
- 水 …200ml
- きび砂糖またはグラニュー糖 …150〜200g
- レモン汁 …小さじ1(香りを引き締める)
◎作り方:
- レモングラスを3〜5cmに切って潰し、鍋に入れる。
- 水を加えて中火で5分ほど煮出す。
- 火を止めて砂糖を加え、完全に溶かす。
- レモン汁を加え、冷まして瓶に保存。
- 冷蔵で2週間以内に使用。
5️⃣ レモングラスジャムのレシピ
◎材料:
- レモングラス(細かく刻む)…大さじ2
- リンゴ(すりおろし)…1個分
- 砂糖 …100g
- レモン汁 …小さじ1
◎作り方:
- 鍋にすべての材料を入れ、弱火で煮る。
- 10〜15分程度、とろみが出るまで煮詰める。
- 清潔な瓶に詰めて保存。冷蔵で1か月以内。
6。レモングラスのバスソルト
◎材料:
- 乾燥レモングラス(みじん切り)…大さじ3
- 天然塩(エプソムソルトや岩塩)…200g
- 重曹(肌にやさしい)…大さじ2
- 好みで精油(レモングラス)…2〜3滴
◎作り方:
- 材料をすべてよく混ぜる。
- 密閉瓶に入れ、1〜2日置いて香りをなじませる。
- 入浴時に大さじ2〜3杯をお湯に入れる。
※敏感肌の人はパッチテストをおすすめ
■種から育てて薬草・ハーブを活用!
※参考1:薬草療法・ハーブ療法について
※参考2:民間療法とは?