種から育ててハーブを活用!植物療法 】#2 カモミール
リラックスにも胃腸ケアにも。やさしく寄り添うハーブの代表格カモミール。実は一口にカモミールといっても、ジャーマンカモミールとローマンカモミールという2種類があり、それぞれ特性や使い道が異なります。違いをきちんと理解して、日常のケアに役立てましょう。
📝目次
【1】カモミールってどんな植物?
カモミールはヨーロッパ・中東・アジアの温帯地域に広く自生・栽培されるキク科のハーブです。特にヨーロッパでは古くから薬草・香草として使われており、今や世界中に広まりました。
以下の2種類が特に有名です:
マリーゴールド(英語名:Marigold)は、キク科の一年草で、鮮やかな黄色やオレンジ色の花を咲かせるハーブです。学名は Tagetes。よく知られているのは「フレンチマリーゴールド(T. patula)」と「アフリカンマリーゴールド(T. erecta)」の2種類です。花には独特の香りがあり、虫よけ効果があるため、家庭菜園ではコンパニオンプランツ(他の植物を助ける植物)としても使われます。
項目 | ジャーマンカモミール | ローマンカモミール |
---|---|---|
学名 | Matricaria chamomilla | Chamaemelum nobile |
特徴 | 一年草。高さがあり、白い花弁と黄色い花芯。リンゴのような香り。 | 多年草。地を這うように育ち、やや小ぶりな花。苦みを含む香り。 |
香り | リンゴのように甘く優しい | 少し苦味があり、深みのある香り |
主成分 | アズレン、カマズレン(強い抗炎症作用) | エステル類(気分を安定させる作用) |
適した使い方 | 消化不良・炎症・不眠など、医療寄りの用途に。 | リラックス・香り・アロマ・入浴剤向き。 |
「ジャーマン=医療用」「ローマン=リラックス用」という違いは、含有成分の違いと香りの性質によります。
≪1-1≫ 生息地・主な栽培地域
- ジャーマンカモミール:ドイツ、ポーランド、ハンガリー、インド北部、中国東北部などで商業栽培。
- ローマンカモミール:イギリス、フランス、モロッコなどで精油用に栽培。
【2】各地で愛用されるカモミール
≪2-1≫ 使用が盛んな国ベスト3
- ドイツ:カモミールを“万能薬”とする伝統的な医療文化が根強く、薬局でも処方される。
- エジプト:日常的にハーブティーとして親しまれ、食後の消化促進やリラックスに用いる。
- イギリス・フランス:ローマンカモミールの精油が人気で、アロマやスキンケアに活用。
≪2-2≫ 世界文化とカモミール
💊ドイツでの具体的な活用法(医療分野)
ドイツでは、カモミールに含まれる「アズレン」「ビサボロール」「カマズレン」といった成分の抗炎症・鎮痛・殺菌作用が重視されており、症状に応じて複数の用途で使えることから「万能薬」と称されています。
- 胃腸薬(整腸・鎮痙剤):カモミールエキス入りの医薬品が処方される(例:カモミールティンクチャー)。
- うがい薬・口腔炎対策:口内炎、のどの炎症、歯周病のケアに用いられる液剤。
- 坐浴剤・湿布薬:痔・外陰部の炎症・皮膚疾患の緩和に用いる。
- スチーム吸入:気管支炎や鼻炎の緩和に。
- 外用軟膏やクリーム:皮膚炎、湿疹、かゆみ止めなどに(ビサボロール配合クリームが有名)。
📌ドイツではカモミールの抽出液は医薬品として分類されており、臨床でも処方される例があります。
🇪🇬 エジプト
- 古代エジプト:神聖な薬草とされ、ミイラの防腐処理や神への供物にも使われていた記録があります。
- 現在:ジャーマンカモミールが広く栽培・輸出されており、国内でも日常的に使われています。
- 砂糖を加えたり、ミントやハイビスカスとブレンドして味を楽しむ文化も。
- 食後の胃のケアやリラックスタイムにハーブティーとして。
💡特に砂漠気候の中で、胃腸や神経の安定を保つ
【3】カモミールの効能
≪3-1≫共通の効能
カモミールには以下のような共通の効能があります。
- 抗炎症作用:炎症を抑え、肌や粘膜のトラブルを軽減。
- 鎮静作用:ストレスや緊張を和らげ、リラックス効果をもたらす。
- 消化促進:胃腸の働きを助け、消化不良を改善。
≪3-2≫ジャーマンカモミールの効能
ジャーマンカモミールは特に医療向きのハーブで、以下のような効果があります。
- 胃腸の不調に:食後のハーブティーで胃もたれや腹部の張りを軽減。
- 不眠・神経の高ぶりに:就寝前に飲むことでリラックスし、眠りをサポート。
- 口内炎や目の疲れに:煎じた液をうがいや湿布に使用。
- 抗炎症作用が強い:口内炎や喉の炎症に適している。
- 抗アレルギー作用:花粉症などの症状緩和に役立つ。
- 鎮痛作用:生理痛や頭痛の軽減に効果的。
💡 ドイツでは医薬品として扱われており、信頼性の高いハーブです。
≪3-3≫ ローマンカモミールの効能
ローマンカモミールは心のケアやリラックス向きのハーブで、以下のような効果があります。
- リラックス・情緒安定に:ハーブティーや入浴で気分を整える。
- アロマ・精油として:肌にやさしく、スキンケアやベビーケアに適している。
- ハーブピローやバスハーブとして:乾燥花を布袋に入れて使用。
- 鎮静作用が強い:ストレス緩和や不眠症対策に効果的。
- 免疫活性作用:風邪予防に役立つ。
- 肌荒れ改善:スキンケア向きで、敏感肌にも優しい。
💡 ローマンカモミールは心のケアに向いており、穏やかな生活に寄り添います。
【4】育て方ガイド
≪4-1≫ ジャーマンカモミール
- 性質:一年草。種から育てやすい。
- 種まき時期:春(3〜5月)または秋(9〜10月)
- 日当たり:日なた
- 水やり:乾き気味に。過湿は根腐れの原因。
- 収穫:花が咲いた直後に摘み取り、陰干しで保存。
≪4-2≫ ローマンカモミール
- 性質:多年草。グラウンドカバーとしても優秀。
- 植えつけ時期:春または秋(苗がおすすめ)
- 日当たり:日なた〜半日陰
- 香り:苦味のある落ち着いた香り
🌿 グラウンドカバーとは?
「地表を覆う植物」のこと。ローマンカモミールは多年草で横に広がりやすいので、芝生のように地面を覆う使い方ができます。イギリスなどでは**「カモミール芝生(chamomile lawn)」**として人気。
◎特徴:
- 踏んでも丈夫で、ほんのり香りが立つ
- 草丈が低いため、花壇の縁取りや通路脇に最適
- 芝の代用としても使える(ただし完全な芝のような耐久性はない)
【5】収穫・乾燥・保存方法(ジャーマンカモミール)
≪5-1≫ 収穫のタイミング
- 花の中心(黄色部分)がこんもりと盛り上がり、白い花弁が横向きまたはやや垂れてきた頃が適期。
- 午前中の、露が乾いた時間に摘むのが理想。
≪5-2≫ 洗い方
- 基本的に洗わない方が香り・成分が残る(無農薬栽培が前提)。
- どうしても気になる場合は、軽く流水で流し、キッチンペーパーで丁寧に水分を取る。
≪5-3≫ 自然乾燥
- 風通しの良い日陰に新聞紙かネットを敷いて広げる(重ならないように)。
- 約1週間でパリパリになるまで乾燥。
- 完全に乾いたら密閉容器で冷暗所保存。
≪5-4≫ 食品乾燥機
- 予熱せずそのまま花を並べる。
- 温度:35~45℃
- 時間:6~8時間程度(乾き具合で調整)
- 花が砕けやすくなり、芯まで乾いていればOK。
【6】ジャーマンカモミールの活用法
⚠️ 使用時の注意
- キク科アレルギーの人は慎重に
1️⃣ 煎じ薬の作り方(口内炎・喉の炎症用)
◎作り方:
材料
- 乾燥マリーゴールド、ホホバまたはオリーブオイル
- 水 300ml
手順
- 鍋に水と花を入れ、弱火で10〜15分ほど煮出す。
- 茶こしで濾してから、冷まして使用。
◎用途
- うがい液として(1日3回程度)
- コットンに浸して患部へ当てる(湿布)
◎効能(ジャーマンカモミールの特徴)
- 抗炎症作用:口内炎や喉の炎症を和らげる。
- 抗アレルギー作用:アレルギー症状の軽減に役立つ
2️⃣ 目の疲れ・リラックス用湿布(アイパック)
◎作り方:
材料
- 乾燥花 小さじ1(ジャーマンカモミール・ローマンカモミールどちらも可)
- 水 100ml
手順
- お湯で5分ほど花を浸してお茶を作る。
- 清潔なガーゼやコットンに浸し、軽く絞る。
- 冷めた状態で目の上に5〜10分当てる(※目に液が入らないよう注意)。
◎効能
- ジャーマンカモミール:抗炎症作用が強く、目の疲れや炎症を抑える。
- ローマンカモミール:鎮静作用が強く、リラックス効果が高い。
【7】 キク科植物はなぜ薬効が多いの?
実はカモミールやツワブキをはじめ、キク科には薬効を持つ植物がとても多くあります。
◎理由は3つ:
- 抗炎症成分を多く含む:セスキテルペンラクトンなど、抗菌・抗炎症に働く物質を蓄える傾向がある。
- 精油や香りが豊か:リラックス作用・防虫効果などに応用されやすい。
- 育てやすく、繁殖力が強い:栽培しやすいため、各地で民間療法に取り入れられてきた。
◎代表的なキク科の薬草例:
- ヨモギ:止血・抗菌・お灸にも。
- エキナセア:免疫力アップに。
- タンポポ:利尿・肝機能サポートに。
- ツワブキ:咳・喉の炎症止めとして一部地域で利用。
キク科の植物は「身近で育てられて、しっかり役立つ」薬草の宝庫です。