東洋医学は『病が発生する前に治す』事を一番の目標としているので、鍼灸治療は「予防医学」に属します。「病院で検査をしても異常がないのに、症状が現れている」状態を「未病:みびょう」と言い、「気・血・水のバランス」整える事で「未病が病気に至る」のを予防するのです。
鍼灸治療は「予防医学」
未病から「病気に至る」のを防ぐ
東洋医学の特徴
- 「予防医学」
- 「自然治癒力」を重視
- 「心身一体」(心身バランス)
- 「不定愁訴」に有効
- 「同病異治・胃病同治」
「不定愁訴:ふていしゅうそ」とは?
「本人は、自覚症状がある」のに、
医師に相談しても「検査で異常は見つからず、不調の原因がわからない」状態のこと。
「同じ症状が長く続く」場合や、「様々な症状が不規則に現れる」場合もあります。
✅【身体的不調】 |
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✅【精神的不調】 |
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【東洋医学】の考え方
「東洋医学」は、次の考えに基づいて施術します。
「心身一体」
「心」と「身体」は、繋がっているので、
「片方が不調」であれば「他方も不調」になる。
「自然治癒力」を重視
「東洋医学」の治療は、
直接的に原因を「排除・撲滅する」ことはせず、
「自然治癒力」を高めて「疾病」状態を改善しようとします。
多くの疾病は、『治癒力の低下により発症する』ことから、
「自然治癒力」を重視する「東洋医学」は、力を発揮します。
それに対し「西洋医学」は、
「外科的処置」や「化学療法」により、
『病原微生物を撲滅する』など、
原因そのものを『排除しようとする』ので、
『原因の明らかな状態』に対して「非常に有効」です。
「予防医学」
「東洋医学」では、
『病が発生する前に治す』事を一番の目標としています。
※これを「未病:みびょう」と言います。
これは、現在増加している
✔「生活習慣病の予防」や、
✔「高齢者の健康寿命の対策」に適しています。
✅フレイル予防
年を重ねると「気力・体力が衰え」、「外出を控える」ようになってきます。それに伴って、病気を患っていないのに「手助け」や「介護」が必要となってしまう状態を「フレイル」と呼びます。
■「フレイル」予防の鍵
- 適度な「運動」
- バランスの取れた「食生活」
- 「社会活動」への参加
✅日本の医学史
日本の医療は、古くから民間療法だけで対応していました。
そして「漢方や鍼灸治療」などが導入されると、
「東洋医学」が主流を占めるようになりました。
「江戸時代」末期になると・・・
オランダを通じて「西洋医学」が紹介されました。
この西洋医学は「外科治療や伝染病」に優れていました。
「明治時代」になり・・・
「戦乱の世」「伝染病が氾濫」で、
「西洋医学」が多いに役立ちました。
その後・・・
「西洋医学」が主流となって「日本人の健康」を支え、
「経済の発展」と共に「平均寿命」が伸びました。
「高齢化社会」を迎えるようになると・・・
「西洋医学では説明のつかない症状」、
「西洋医学では治らない病気」に悩む患者が増えてきて、
「症状の改善」や「生活の質の向上」を目的に、
「東洋医学による治療を求める」ようになりました。
現在、「東洋医学科」や「東洋医学研究所」を
設置する病院が増えてきています。
「胃病同治・同病異治」
✅「胃病同治」 | 病名が違っていても治療法が同じこと |
✅「同病異治」 | 「同じ病気」であっても、それぞれ「異なった治療」をすること |
その為「東洋医学」の立場から治療する時は、
「現代医学的な診断名」に拘ることはありません。
例)「肩関節の痛み」には「五十肩・打撲・スポーツ障害」など様々な診断名があります。
【東洋医学】診察方法
東洋医学:痛みの原因
- 【実証の痛み】滞って通じてない
- 【虚証の痛み】栄養が不足している
・・・どちらかが原因と考えます。
不通則痛、通則不痛
「通じざれば則ち痛み、通ずれば則ち痛まず」
- 体の中で、何らかの原因により「気の滞り」や「血の滞り:瘀血」で痛みが発症する。
- 逆に渋滞がなければ「気」や「血」はスムーズに流れるので痛みはでない。
不栄則痛
「気・血」の不足で隅々まで栄養が行き渡らずに痛みが生じる。
「東洋医学の基盤」
- 「陰陽論」
- 「五行論」
- 「天人合一思想」(てんじんごういつ)など
「天人合一」思想
人体は「自然の一部」であり、人体と自然の間には「密接な関係」があるので、「自然界に起こる環境の変化」(天候・季節・風土など)は人体に影響を及ぼす。これは・・・人は自然に包まれ、自然と情報交流しながら「自らの秩序を創り上げている」ので、自然と人体のリズムが「同調」していれば健康であり「同調していないと健康を損なう」とも言えます。
「陰陽論」
万物を「相反する2つの要素:陰と陽」でとらえる考え方。互いに「対立・依存」しながら、絶えず変化している関係。
「五行説」
この世に存在する全てのもの(万物)を「5つの要素:木・火・土・金・水」に分類する考え方。この「5つの要素」は、人間の生活に不可欠なもので、それぞれが「密接な関係」のもとに存在しています。互いに影響を与え合う(助けたり、打ち消し合ったりする)ことで、「バランスを保っている」と考えます。
✅木の性質 | 草木が育つように「伸び広がる」性質 |
✅火の性質 | 炎のように「激しく燃え上がる」性質 |
✅土の性質 | 万物を育み「生み出したり、受け入れたりする」性質 |
✅金の性質 | 金属のような「重厚感・収斂性がある」性質 |
✅水の性質 | 「冷やす・潤す・下へ流れる」性質 |
✅五臓
「五行説」を身体に応用したのが、「五臓:肝・心・脾・肺・腎」で、「相生・相剋関係」によりお互いのバランスを保っています。
✔「相生関係:お互いに助け合う」
✔「相剋関係:お互いに打ち消しあう」
なお「内臓」と同じ呼称ですが、「東洋医学」独自の機能(働き)を含んでいます。